紫根の種類
関税保護政策は本来へ需要を外国から国内の生産者へと移転する拡張的な政策である。
関税保護は、効率的な海外生産を非効率な国内生産に置き換えるものであるから、このことで非効率が生じるのは確かだが、その影響は2次的なものである。
スムート=ホーリー関税法はアメリカへの輸出国に打撃を与えただろうが、関税が大恐慌をもたらしたとするなら、自国の関税が外国の報復関税を招くことでアメリカの輸出を減少させたのでなければならない。
なるほど、実質輸出は28年のピークから311年にかけて約50%減少、実質輸入は29年のピークから32年にかけて40%以上減少している。
また、アメリカ経済は33年以降、回復に向かっていったが、それにともなって輸入が増加した結果、純輸出の対になり、需要がなくなったからそうなったのであって(投資のコストについては後述)、なぜそうなったのかを説明しないかぎり、大恐慌を説明したことにはならない。
もちろん、需要の減少を説明しようという理屈はあった。
20年代のブームで、所得が高所得者層に集中したことにより貯蓄率が上昇し、全生産能力を吸収するだけの需要をつくりだすことができなかったという議論がある。
また、20年代を通じて未曾有の建築ブームがあり、建築物が完全に飽和状態に達した結果、この超飽和の時期を抜け出るのに長い年月を要したという議論もある。
30年代の大恐慌の原因は、建築循環の下降局面と主循環の一致、技術進歩・新領土開発・人口増加のそれ謂要減少は大恐慌の原因ではなく結果大恐慌時に、消費(特に耐久消費財)・設備投資・住宅投資が大きく落ち込んだのは事実である。
しかし、これらは、大恐慌の原因というよりも結果である。
大恐慌をもたらしたといっても、不況によって雇用が不安GNP比は37年までマイナスだった。
すなわち、アメリカでは純輸出の減少時に景気が回復しているのである。
このことから考えても、純輸出の減少は景気を大きく後退させる要因ではなかった。
財政政策はむしろ景気を下支えしていた恐慌を悪化させ、大恐慌にしたのは財政政策である、という議論もある。
しかし、多くの人びとの思い込みに反して、政府支出は31年央まで増加している。
その後、33年央まで減少しているが、政府支出の対実質GNP比は、GNPが減少したことによって増加している。
対実質GNP比は、実質GNPのピークである29年第34半期には3・7%であったが、ボトムである33年第14半期には20・6%まで増加していて、それの停滞による投資機会の消滅であるという議論もある。
しかし、これらの要因によって、耐久消費財への支出が2分の1以下になり、設備投資は、なんらめざましい技術進歩も、新領土の開発も、人口増加もないなかで、急速に回復した。
したがって、この間、政府支出はGNPを7・9%分下支えしていたことになる。
すなわち、もし財政支出の支えがなければ、大恐慌期のアメリカの実質GNPは、36%ではなく、44%減少していたことになる。
財政収支の状況を見ると、31年以降、中央政府の総歳出額は総歳入額の落ち込みにもかかわらず増加していた。
32年以降は、さらに総歳入額が急減したなかで、政府は総歳出額を増加させており、財政赤字は急拡大していた。
したがって、大恐慌期の財政政策は景気の足をひっぱっていたのではなく、景気を下支えしていたことになる。
財政政策は大恐慌を回復させるのに十分な水準ではなかったという議論はありうるが、緊縮的財政政策により不況を大恐慌に転化させたとはいえない。
また、33年からの経済の急回復においても政府支出が伸びているが、経済全体が急速に回復したことによってGNPに占める比率は停滞したままだった。
これまで見てきたように、貿易規模、消費、投資は大恐慌期に大きく減少した。
しかし、実質GNPが大きく落ち込むのが恐慌の定義であるのだから、GNPの構成要素である投資や耐久財への支出が減少しているのは当然で、これを不況の原因ということは難しい。
株価暴落が大恐慌の引き金ではない大恐慌の始まりが29年10月の株価暴落であることに疑いはないが、これが原因であるかについては議論がある。
たしかに、29年の株価の暴落が経済にマイナスの影響を与えたのは事実である。
株価の暴落により個人資産は約10%目減りし、消費者の資産に対する負債の割合は上昇し、将来に対する消費者の不安は増大した。
しかし、前述のT教授は、29年以降、現在まで、株式市場は何度も乱高下したが、大恐慌を引き起こしたのはマネーサプライの減少大恐慌を引き起こしたものはなんだったのだろうか。
87年にも株価は暴落し、その動きは29年の株価暴落とよく似た動きをしたが、それにもかかわらず世界経済は不況には陥らなかった。
このことは、株式市場の暴落自体は大恐慌をもたらすほど大きな出来事ではないということを示しているという。
また、株価は、29年から311年にかけて5分の1以下に暴落した。
これが景気に圧力をかけたことは事実であるが、株価は企業収益の予想の結果であって、株価の下落が景気後退をもたらしたとまではいえない。
犬はうれしいと尻尾を振るが、犬の尻尾を振ってやれば犬が喜ぶわけではない。
それが大恐慌と同様の動きをもたらしたことはない、と指摘しているデフレスパイラルは、フローとストックの両面で経済活動を収縮させる。
フローのプロセスは、金融引き締めの結果としてのマネーサプライの減少が物価の下落を引き起こし、物価の下落が実質金利を上昇させ、実質金利の上昇が耐久消費財と投資を減少させて景気後退を招き、景気後退が物価をさらに下落させるという循環である。
卸売物価が年率で12%下落するなかで、32年には社債金利(Baa格)は11%にまでこれに対して、連銀は31年9月、ドル価値の維持のために引き締めを行い、図5‐4に見るような、利子率の急上昇が起こった。
32年に入ると、連銀は緩和政策を試みた時期もあったが、徹底しなかった。
このような金融政策の結果、マネーサプライ(M)は29年第34半期から33年第24半期までに35%も縮小した。
しかし、33年に入ってようやく緩和の動きを見せるようになり、同年4月に金本位制を停止して本格的な金融緩和に転換した。
30年末になると、破綻する銀行が出はじめ、31年夏には銀行破綻が高水準に達して、いわゆる銀行恐慌が発生した。
しかし、連銀はなお政策の基調を変えなかった。
このころになると、アメリカがドルを金に対して引き下げるのではないかという思惑から、大量の金が上昇した。
不況のさなか、実質金利は20%以上にもなったということである。
物価下落のなかで、それほど低下しなかった。
実質賃金は下げ止まり、これに、さらにストックのプロセスが加味される。
物価下落は、ストックの面では負債の実質価値を上昇させる。
債務は不良債権となり、銀行貸し出しが減少し、さらには金融システムが崩壊し、マネーサプライが減少する。
マネーサプライの減少はさらに物価を引き下げるという循環である。
これに加えて、物価が下落するという期待が支出の先送りを生み、さらに需要を減少させ、現在の物価を下落させることになる。
この過程に、さらに債務がからんでくる。
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